mattintosh note

どこかのエンジニアモドキの備忘録

白背景でのフィギュアの撮り方

白背景でのフィギュアの撮り方

ホビーとカメラを嗜んでいる方であればフィギュアやガンダムなどのプラモデルを白背景で撮ることは多いと思います。ただ、白背景って簡単なようで案外難しいんです。

(いきなり言ってること違うけど)白背景で撮ること自体は難しくありません。白い背景を用意して撮ればいいだけですので。

ここで言う「難しい」というのは、白背景をいかに真っ白に撮るかということを指します。(RGB 値で言うと 255, 255, 255 の状態)

フィギュアやガレージキットガンプラを白背景で可愛く格好良く綺麗に撮りたいですよね。

白背景撮影白背景撮影白背景撮影
白背景撮影

インターネットで「白背景 物撮り」なんかで探してみてもフィギュアや模型なんかを例に解説していて、かつクオリティの高いサイトはあまりなく、私が見た中では『nipper』さんか『YZPハウス』さんの記事が有用かなというくらいでした。(白背景でフィギュアや模型の写真を撮っているサイトはたくさんあるがその撮り方を解説してるサイトは無いという話ね)

nippper.com

yzphouse.com

最近、フィギュアレビュー用に背景を選ぶのが面倒になってきたので白背景で撮る機会が増えているのですが、毎回セッティングが適当なので自分用のメモとして今回記事にしておこうと思いました。

以前こんなものも作ってみたのですが今回は一般的な方法でやっていきます。

mattintosh.hatenablog.com

「我が家ではこうやってるよ」というだけでこれがベストな撮影方法というわけではありませんのであしからず。

先に言っておくと最低でも照明が 2 灯必要です。ここでは Godox のコマンダーと TT600 というスピードライト(ストロボまたはフラッシュとも言う)を使用します。TT600 には特に制限はありませんが、コマンダーの方は対応するカメラメーカーが決まっているので注意してください。

これ以外に光をディフューズするためにソフトボックスやアンブレラを使用します。ソフトボックスは四角い方が扱いやすいでしょう。

今回背景紙にはサンテックのケント紙(ホワイト)を使用していますが PVC のものでも大丈夫です。

絶対にこれらが無いと出来ないというわけではありません。身の回りのもので代用できるものもあったりしますのでその辺はご自身で工夫してみてください。

『白抜き』と『白飛ばし』について

どちらもインターネットで調べればすぐ出てきますが、『白抜き』は撮影した写真を Photoshop なんかで被写体の縁に沿って切り取るなどして背景を白くすることです。被写体が単純であれば簡単ですがフィギュアの場合は造形が複雑なこともあってなかなか難しいことが多いです。

『白飛ばし』は撮影の段階で背景を真っ白にしてしまう方法です。Photoshop の被写体選択の工程でも自動である程度正確に選択されるため扱いやすいです。

今回は後者の『白飛ばし』をやっていくお話です。

露出について知っておく

とりあえず「明るい環境(照明)で撮れば明るい写真が撮れる」という考えは誤りです。(カメラの性能を超えるレベルの照明なら明るくなりますが)

使用するカメラや選択しているモードによりますが、オートや絞り優先、シャッタースピード優先などの場合はカメラが自動的に露出を調整するため白飛びが起きにくくなっています。フレーム内の明暗差や被写体の色、測光モードによっても変わってきますが、ある程度カメラの設定をマニュアルで調整してあげる必要が出てくると思います。

露出についての解説はここではしませんのでインターネットで調べてみてください。

普通に撮っても白背景は白飛びしない

普通に写真を撮るとしたらカメラに近い方から被写体、背景という置き方になり、キーライトになる照明はカメラと被写体の間に設置すると思います。この状態で撮っても背景は真っ白にはなりません。例えば被写体と背景が同じ物体だったとして被写体に当たる光の強さを 100% とした場合、光は距離で減衰するので背景は確実に 100% よりも弱くなります。

これを「露出補正を上げる」「絞りを開ける」「シャッタースピードを遅くする」「ISO を上げる」といったことをしても被写体の方が当たる光が強いため先に白飛びします。

キーライトだけで明るくしても被写体が先に白飛びする
キーライトだけで明るくしても被写体が先に白飛びする

被写体の色や材質によってはこれでも背景の白飛ばしが出来ることもあるかもしれませんが、白飛ばしをするには明るさの関係が「背景 ≧ 被写体」である必要があります。

なので被写体用の照明と背景用の照明の 2 つを用意してあげる必要があります。詳しくは先に紹介した nipper さんの記事を読んでみてください。

フィギュアを背景白飛ばしで撮ってみよう

ここでは Godox のスピードライト(ストロボ)を 2 灯使いますが、明るさの変えられる LED でも対応はできると思います。単純な電球とかだと光量の調整を距離で行うことになるので結構難しいかもしれません。

バックライトの角度や背景紙の角度など

地面に垂直な壁があったとして地面に向かって直線的な光を当てるとどうなるでしょうか。壁はそれほど明るくなりませんよね。なのでできるだけ背景が明るくなるように光を当ててあげる必要が出てきます。

カメラに光が入るように背景紙に照明を当てる方法として二通りのパターンがあります。

① 直立した背景紙に対して垂直またはそれに近い角度で光を当てる(影の出方が不自然になる可能性がありますが横からでも OK)

② 傾斜をつけた背景紙に上から光を当てて反射させる(傾斜は弧を描いていても OK)

撮影台では背景紙にアールを付けてライティングによって奥行きを出したりできるようになってたりしますが最終的には背景が白飛びすれば良いのでどのような方法でもかまいません。自分の立ち位置から見て明るく見えるのではなく、カメラから見て背景が明るくなることを意識してセッティングしましょう。

他にも背景をトレーシングペーパーなどにしてその裏から光を当てる方法もあります。

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背景に均一に光を当てて白飛びさせることができるなら何でも OK です。

我が家は↓のどちらかの方法でやっています。2 枚目に謎の紙が付いていますが後ほど説明します。

最初にバックライトの光量を調整をする

カメラのセッティングを固定します。ここではストロボを使用するためシャッタースピード 1/200 秒、絞り F11、ISO 100 で固定しています。

この状態でストロボの光量を変更しながら背景紙だけを撮影し、ハイライトが白飛びする光量を確認します。LED で十分な光量が得られない場合や光量が変更できない照明を使用している場合は照明の距離やシャッタースピードで調整します。ノイズを許容できるなら ISO で調整してもかまいません。

カメラの液晶を目視してもあまりあてにならないのでヒストグラムを表示できる場合はヒストグラムやハイライト警告を参考にするといいでしょう(ただし、カメラ側で露出オーバーだったとしても RAW の場合は現像時に使用するプロファイルによってはオーバーにならない可能性があります)。

バックライトの光量調整
バックライトの光量調整

上記の結果では 1/4 以上の光量が良さそうです。1/4 はこのあとキーライト分が加算されて更に明るくなるでしょうし、ソフトウェアの補正でもなんとかなるレベルです。1/2 であればほぼ白飛びしている状態です。

バックライトとカメラの設定はこれで固定します。

バックライトの被写体への回り込みを確認して被写体の位置を決める

次に、被写体を置いてみて光の回り込み具合を確認します。被写体や完成イメージによって光をどの程度回り込ませるか変わってきますので「この距離が正解」というものはありません。

先程の確認でバックライトの光量は 1/4 以上が良さそうというのがわかりましたが、一応 1/8 〜 1/2 で確認してみます。

バックライトの被写体への回り込みの確認
バックライトの被写体への回り込みの確認

光の周り具合や台座の反射なども考慮すると 1/4 が良さそうです。1/2 は被写体への光の回り込みが少々強いため過剰な照りの演出となり輪郭も曖昧になりそうです。

この回り込みの光量の調整はバックライトの光量やカメラの設定で行わずに、背景と被写体の距離で調整していきます。1/2 の状態で被写体を背景から徐々に遠ざけたときの光の回り込みの違いを見てみましょう。

※背景が白飛びしているため写真の継ぎ目がわかりやすいように点線を入れてあります。カメラの位置を固定しているため見切れているのはご了承ください。

被写体を背景から遠ざけて光の回り込みを調整する
被写体を背景から遠ざけて光の回り込みを調整する

このように被写体を背景(光源)から離すことによって背景の明るさを変えずに光の回り込み(被写体の明るさ)を変えられるようになります。

あとは被写体を手前に近づけた分のフレーミングを調整します。

キーライトの調整

バックライトの明るさと被写体の位置が決まったのでキーライトを調整していきます。ここではざっくり 1/16 〜 1/4 まで 1 段ずつで確認しています。

※上の影の理由は次の項で出てきます。

キーライトの調整
キーライトの調整

キーライトの光量はひとまず 1/4 くらいで良さそうです。これにバックライトの光の回り込みが加算されると考えてください。

バックライトをなるべく被写体に当てないようにする

これは使う機材やセッティングによっては特に必要のないものです。

先程も出てきたこちらの写真ですが、上の照明に何やら紙が付いていますね。セッティング的には S2 ブラケットにボーエンズマウントのリフレクターとトレペをセットしたものをぶら下げているんですがそれに白画用紙をフラップとして貼り付けています。

フラップ無しの状態だと光が拡散してフィギュアの場合は頭頂部に直接光が当たってしまいます。

フラップを設置することで手前に拡散される光を背景側に反射させ、被写体への光の回り込みを減らしたり、背景に当たるバックライトの光量を上げています。

フラップの有無の違いを写真で見てみるとこんな感じです。

バックライトのフラップあり・なし
バックライトのフラップあり・なし

グリッドが装着できるソフトボックスを持っている場合はグリッドを使っても良いでしょう。

バックライトはできるだけ背景にだけ当てるように絞り込むとキーライトへの影響が少なくなるので光量のコントロールもしやすくなると思います。

キーライトとバックライトを合わせて撮る

あとはキーライトとバックライトを同時に発光させるだけです。

キーライトとバックライトの同時点灯
キーライトとバックライトの同時点灯

実際に撮ってみたものがこちら。(できればもうちょっと被写体を手前に引きたいところでしたが我が家はスペースが足りません…)

白背景白飛ばし
白背景白飛ばし

撮影したものを PC に取り込んでみて「明るい OR 暗い」などがあれば光量を微調整しましょう。Godox のコマンダーやスピードライトを使用している場合は MENU の STEP で 1/3 段刻みにするか 0.1 刻みにするか設定ができます(0.1 刻みの場合はスピードライト側が対応している必要があります。TT685 は対応していますが TT600 は非対応です)。

今回は最終的にキーライトを少し明るくして 1/4+0.7、バックライトを 1/4 にして撮影しました。

少し背景が暗くなってしまった場合は後処理で対応してみる

我が家のように撮影スペースの関係で被写体と背景の距離を取ることができず、どうしてもバックライトの光量を抑えなければならないこともあると思います。そうすると背景が白飛びしなくなってくるのですが、撮影時に白飛びさせなくても後処理でなんとかできることがあります。

Lightroom の場合は「白レベル」がハイライト端の領域に割り当てられているためこの値を上げることによって若干暗くなってしまった背景を明るくすることができます(背景の明るさが「白レベル」の範囲に入ってることが条件です)。ヒストグラム右上の▲をクリックしてハイライト警告を見ながら調整してみましょう。トーンカーブで調整することもあるかもしれません。

左が編集前、右が編集後です。赤い部分は完全に白い部分です。

Adobe Lightroom
Adobe Lightroom

Photoshop の場合は「レベル補正」で白色点を指定すれば OK です。インターネットで調べると白抜きの方法として紹介されている記事が出てくると思いますのでそちらを参考にしてみてください。

左が撮影直後のもので、右が Lightroom で「白レベル」を上げて調整したものです。差がわかりやすいように完全な白を縁として入れてあります。

ソフトウェア処理で白飛びさせた場合
ソフトウェア処理で白飛びさせた場合

あると良いもの

水準器

白背景は縦横の基準に出来るものが無いので水準器(レベラー)があると良いです。Godox のコマンダーで Xpro 系を使っている場合は併用できませんが、X2T 系を使っている場合はコマンダーのホットシューに装着しておくことができます。カメラに水準器機能が付いている場合はそちらを使っても良いでしょう。

アクリル板、アクリル台、アクリルブロック

白飛びしにくい底面から被写体を持ち上げてあげることで台座の影などを無くしたりできます。アクリル自体はバックライトで見えなくなるか見えにくくなるため宙に浮いているような感じにできます。

注意すること

逆光に強いレンズを使いましょう

背景を白飛ばしするときは背景が発光しているような状態、つまりカメラにとっては逆光になります。逆光に弱いレンズを使用するとフレアが発生してコントラストが低下してしまいます。後処理でもフレアを軽減することはできますがなるべくならフレアが発生しにくいレンズを使いましょう。

照明の色は揃えましょう

キーライトとバックライトの色が違うと正しい色が出ません。出来るだけ同じ製品を使いましょう。

あとがき

あくまで自家製セッティングなので真似すれば絶対にできるというものでもないかもしれませんが撮影の参考になれば幸いです。実践してみて上手く出来たなどのご報告をいただけると嬉しいです。

今回被写体になってもらった三玖のフィギュアもレビューしておりますのでもしよければご覧になっていってください。

mattintosh.hatenablog.com

もうちょっと撮影スペースに奥行きが欲しいぜ…。

撮影機材
カメラNikon D800E
レンズTAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD F004N
照明Godox TT600
Godox UB-85W