『シフトレンズ』ってご存知でしょうか?大判カメラで使われるシフトという技が使えるレンズのことです。
ニコンには古くから PC Nikkor というシリーズがありました。
Nikon PC Nikkor 28mm F3.5 は 1981 年に発売されたレンズですが未だにメーカーページに載っています。
New PC Nikkor 28mm F4 は千夜一夜物語にも掲載されています。
デジタルになってからシフトに加えてチルトが使える PC-E シリーズが登場しました。(欲しいとは思っていますがなかなかお高くて手が出ません)
さてそんなかなり古い Nikon PC Nikkor 28mm F3.5 ですが風景撮影用に買ってみたのでフィギュア撮影にも使えるのかちょっと試してみることにしました。
その前にレンズとフィギュア撮影の関係をちょっと説明しておきます。
私は 28mm という焦点距離でフィギュアを撮ることはあまり無いです。理由は単純にパースが付くのが嫌だからです。ショップや展示会でどうしてもスペースが無くて引けないような場合に使うことはありますが、基本は人が見たままに撮ることを念頭に置いているのでショップ撮影でもある程度の焦点距離を確保するようにしています(とは言ってもつい最近まで広角レンズ自体持っていなかったのだけど)。自宅でのレビューの撮影では 50〜120mm くらいを使っています。
フィギュア撮影における焦点距離は色々な方々がまとめてくださっているのでそれを見ていただくのが良いと思います。
私はフィギュアは顔が命だと思っているのでフィギュアの顔の正面とカメラができるだけ垂直・水平になるようにしています。望遠レンズを使うときはあまり気にしなくていいのですが広角になるにつれてここで悩みが出てきます。
何枚か撮ってみました。左から順に、
- レンズの中心をフィギュアの顔に合わせた場合
- レンズの中心をフィギュアの中心に合わせて場合
- フィギュア全体が収まるようにカメラを傾けた場合
となっています。
カメラを水平にしてレンズの中心をフィギュアの顔に合わせてしまうと台座が写りませんし頭の上の余白も無駄になります(1)。ここでカメラの水平を保ったまま下げてしまうと今度は顔を見上げるようなかたちになってしまいます(2)。ではフィギュア全体が収まりつつできるだけ顔との高さを合わせようとするとパースが出ます(3)。
(1)の場合は単純に距離を取れば解決します。(顔が中心なので頭より上の半分近いピクセルを無駄にすることになります)
(2)も(1)と同様に望遠レンズと同じくらい距離を取ってトリミングすればいいと思います。(ただし望遠レンズと同じ被写界深度にはなりません)
(3)は Photoshop や Lightroom とかの歪み補正で直線は垂直に出来ます。これは傾きの度合いによりますがトリミングが起きます。わざわざ除去する必要もないかもしれません。
さて、トリミングせずにパースも付けずに撮りたいとなったときにシフトレンズが登場します。
シフトレンズは大きなイメージサークルを持っていて PC Nikkor 28mm F3.5 の場合は 30° ずつレンズが回転できて 11mm まで外側にシフトさせることができます。わかりやすく上下左右に最大シフトしてパノラマ合成したものを掲載しておきます。フィギュアの顔をレンズの中心にしたまま下方向にシフトさせれば台座まで写せるんですね(黄色い枠)。
で、切り出してみたものがこれ。台座の手前がボケていますがこれは普通に撮ってもピントが合ってない範囲というのもありますがシフトした影響もあります。
先程の Lightroom でパース除去したものと見比べてみると不自然に下の方が伸びたりはしていません。また、ファインダーで見たまま撮っていますのでトリミングも起きません。
ではここで PC Nikkor 28mm F3.5 と Ai AF Nikkor 105mm F2.8D の違いです。
あるぇー?
うーん………。
本体も台座も同時に写したいときはアリかもですがどう考えても望遠で撮った方がいいですね…。
ま、まぁ使い方によってはこういうのがノートリミングでパース付けずに取れるので…(震え)
上手い使い道を考えたい…(´・ω・`)
ちなみに PC Nikkor の F 値が F3.5 になっていますがこのレンズはレンズ先端の方に絞りが付いているためカメラ側で絞り値が検出できずカメラ設定の開放 F 値になっているからです(実際は F11 に絞っています)。